2013年1月10日木曜日

北方黒色磨研土器 Northen Black Polished Ware

英名Northern Black Polished Wareの日本語名。NBPWと略称で呼ばれることもある。前6世紀〜前1世紀頃に北インドを中心に分布した土器。

インド共和国ウッタル・プラデーシュ州マヘート遺跡出土の北方黒色磨研土器

1940〜44年に行われたアヒッチャトラ−遺跡の発掘調査によって出土した表面が黒色で丁寧に磨かれた精製硬質土器に対して与えられた名称で、北インドを中心に分布することを踏まえて、「北方黒色磨研土器」と命名された。皿(浅鉢)および鉢を基本器種としており、壺や甕はみられない。つまり、食膳具として製作・使用されたものであり、赤色軟質土器による貯蔵具や調理具が伴う。

北方黒色磨研土器の分布

T.N. Roy(1983,1986)や上杉彰紀(2003)らの研究によって前期(前6世紀〜前4世紀頃)と後期(前3世紀〜前1世紀頃)に分期されることがわかっている。前期の北方黒色磨研土器は厚さが1mm〜3mmと非常に薄く、きわめて丁寧に製作されているが、高貴になると、厚さが4mm〜6mm程度に厚くなり、表面調整も粗雑化する傾向がみられる。

また、前期には北インド(現在のインド共和国ウッタル・プラデーシュ州およびビハール州)に分布が限られるが、後期になると周辺地域に分布を広げ、西インド、東インド、北西インド(現在のパキスタン)、さらには南インドの遺跡でも出土するようになる。

その起源についてみると、先行する時期(前10世紀〜前7世紀)に北インドのガンジス川流域東半部に一般的であった黒縁赤色土器(Black-and-Red Ware)、黒色スリップ土器(Black Slipped Ware)を技術的・形態的基盤としていると考えられる。彩文灰色土器を祖形とみなす言説があるが、彩文灰色土器はガンジス川流域西半部に分布する土器であり、交渉関係はあるものの系譜関係にはない。

南アジアの初期歴史時代を特徴づける考古資料の一つである。

【参照文献】

  • Roy, T.N. 1983 The Ganges Civilization: A Critical Archaeological Study of the Painted Grey Ware and Northern Black Polished Ware Periods of the Ganga Plains of India. Ramanand Vidya Bhawan, New Delhi.
  • Roy, T.N. 1986 A Study of Northern Black Polished Ware Culture. An Iron Age Culture of India. Ramanand Vidya Bhawan, New Delhi.
  • 上杉彰紀 2003「北インドの精製土器(Ⅱ)-北方黒色磨研土器を中心として-」『関西大学考古学研究室開設五拾周年記念 考古学論叢』1241~1262頁

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